約 2,035,982 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2252.html
仮面ライダーリリカル電王sts外伝第五話 「ある日のシャーリー」 「う、う~ん!終わったぁ」 一人の女性、シャリオ・フィニーノは書類を完成させ、くつろいでいた。 彼女は自分が作り上げたシステムの書類を作っていたのだ。 「終わったのか…。コーヒーだ飲むといい」 「あ、ありがとうございます、アインさん」 銀髪に黒い帽子を深くかぶった女性、アインからコーヒーを受け取りシャーリーは再び書類に目を向けた。 「それにしてもすごい。画期的なシステムです。これならイマジンも…」 「ああ…。元よりその為のシステムだからな」 「そう言えば、アインさん」 「なんだ?」 「アインさんは起動後の姿は知らないんですよね?」 「そうだな…。実際に見たことはないからな」 「じゃあ、見ます?」 「良いのか?なら、見せてくれ」 「御安いごようです!」 そう言うとシャーリーはキーボードを操作し複数のモニターを出した。 「まずはスバルから。スバルのはややスピード特化してます」 「どんなアーマーなんだ?」 「スバルのは胸部、脚部、肩部に赤色のアーマーが装着されて鉢巻きも赤くなります。 後、これは全てに共通するんですけど顔に仮面はつけてないんです」 「何故なんだ?」 「だって仮面つけたら可愛くないじゃないですか」 「それだけの理由か…」 「後、泳げません♪」 「良いのかそれ…」 「次はエリオ」 (流したな…、確実に) 「エリオのは青色の亀の甲羅の様なアーマーが装着されて、顔の横にアンテナがセットされるんです」 「なんだそのアンテナは?」 「デンソナーと言って言わばソナーシステムですよ」 「小型のレーダーと言う訳か」 「後、このアーマーだけ背部にデンスクリューと言う物があって泳げるんです。ただ…」 「ただ?」 「キック力と防御力以外スペックは、最弱なんです」 「おい、良いのか?」 「いいんですよ。ほら、可愛い男の子がボロボロになるのが良いんですよ♪」 (段々、危なくなってるのは気のせいだ、気のせい。) 「次はキャロ。キャロの場合は金のアーマーが装着されて、帽子が黄色になるんです。 この帽子は自動で飛んだりするんですよ。後…」 「後?何があるんだ?」 「帽子にはリイン曹長が乗り込んでて空を飛んだり盾になったりするんです♪」 「どこのスーパーロボットだ!どこの!」 「て、言うのは嘘で本当は防御力とパワーが高いんです」 (まともなのがないのか) 「で、ラストがティアナ。これは紫色のアーマーでキック力と起動力が最も高いんですよ」 「最後が一番まともだな…」 「あと、ターゲットスコープも搭載してるんですよ。後はキャストオフをつければ…」 「待て、それ以上は色んな意味で待て!」 「性能が…」 「少し、静かにしろ。いいな!!」 「は、ハイッ!!」 有無を言わさぬ口調でシャーリーを黙らせるアイン。 そこへ、ドアをノックする音と共に声が響いた。 「シャーリー、差し入れ」 「入っていいよ!」 シャーリーが返事をすると一人の人、いやイマジンが入って来た。 黒いローブを身に纏い黄金のカラスの様な顔立ちのイマジンであった。 「はい、どうぞ。差し入れのおにぎり。さあ、召し上がれ」 「いつもありがとう、デネブ!アムッ、美味しい~っ!!」 「ささ、アインもどうぞ」 「いただこう」 そう言って一口おにぎりを食べ、アインはこう洩らした。 「美味しいな…」 彼女は感慨にふけっていた。昔を、思い出し…。 (思えば、十年前まではこうやって食べることもなかったな…) 「あれからもう十年、か…」 「どうしたんですか?気分でも…」 「大丈夫、少し考えこんでいただけだ」 「なら、いいんですけど…」 感慨にふけっていたアインにシャーリーは心配し声をかけてきた。 アインが答えると少し安心したようにそれ以上は聞いてこなかった。 ちなみに余談だがアーマーのデザインはシャマルとシャーリーがノリノリでデザインしたらしい。 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1211.html
魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第三話「忠勝、訓練をする。」 (・・・・眼福。) それが訓練所に来た忠勝の感想であった。 忠勝の目の前にはスバル達となのはが戦闘の訓練をしている。スバルのウィングロードがあたりに広がり、ティアナの弾丸が宙を舞う。 そしてエリオのストラーダから吹き出す黄色い魔力、キャロが放つ桃色の魔力とフリードリヒの炎が交わる。 スバルの攻撃を避け、ティアナとエリオの一撃を防御。キャロとフリードリヒの攻撃を空中に形成しておいた魔力で相殺。 忠勝は魔法なんてものを見たことはないので不覚にも幻想的なその魔力と戦闘に見惚れていた。 「・・・どうですか?」 横から声が聞こえる。声がした方を向くと紫の髪の少女、ギンガがいた。ギンガともお互いに自己紹介を済ませている。何故か知らないがギンガは身構えていたのを覚えている。 大して気にしてはいないのだが。そのギンガの問いに何度も首を上下に振る。 忠勝の様子を見てギンガは微笑して隣に立つ。 ふと忠勝は考える。 (自分は・・もしかしてお荷物ではないのか?) よくよく考えてみると自分は魔法なるものを使えない。腕っ節や槍の腕の自信はある。 しかしここに来て薄々わかったことがある。「ここでは魔法を使えないと意味はない」のだと。 戦闘にも魔法を使うし、どうやら日常生活にも「念話」という魔法を使うようだ。 自分は魔力なんてこれっぽっちもないから戦闘用魔法はもちろん、念話さえできない。そんな自分がここにいていいのか?と忠勝は悩む。 戦闘に見惚れて浮いていた自分の感情が一気に沈む。はっきり言って憂鬱だ。 「はい!訓練はここまで!」 「「「「あいがとうございました!!」」」」 そんなことを考えている内に訓練は終わったようだ。なのはが皆の今回の訓練でよかったところ、逆に悪かったところなどを述べている。 結局自分はついてくる必要はなかったじゃないか。槍も持ってきた意味はないな。 忠勝は背を向け歩き出す・・前になのはから声をかけられた。 「忠勝さん、あなたも六課にいる身だから・・訓練やっていかない?」 「・・・・・」 考え込む忠勝。その証拠なのか機械音が唸る。 確かにこの世界に来てから戦闘訓練や体を動かすことは最近やっていない。でも魔力を持ってない自分がこの世界の戦闘技術に通用するのだろうか。 ええぃ、もうどうにでもなれ。 槍を構え、大きく頷く忠勝。その後訓練所の一角にある広い廃墟に連れていかれた。 見上げるとフォワード陣と隊長陣。ちょっと待て、なんでヴィータとシグナムとフェイトまでいるんだとつっこみたくなった。 「準備はいいですか?」 シャリオが空中にキーボードを浮かばせて忠勝に向けて叫ぶ。 無論、準備は完了している。槍を天へと掲げてみせる。 「じゃあ設定は5体で・・・開始!!」 身を構える忠勝。地面に形成される魔法陣。そしてキーボードを覗くシグナム。 「・・・桁・・間違えてるぞ。」 「・・・え?」 地面からは設定数より二桁多い訓練用ガジェットドローンが出現した。 「ちょ!?シャーリー!?」 「何間違えてるの!?」 「ご・・・ごめんなさーい!」 通路を埋め尽くすほどのガジェットドローン。その数ざっと500。 何で間違えたのかは知らないがガジェットドローンは容赦なく忠勝へと向かっていく。 「は・・早く止め「待て!!」・・・?」 フェイトの言葉を遮ったのはヴィータの言葉。そしてヴィータは「マジかよ・・」といった顔で下を見ている。 「あいつ・・・やる気だ・・・」 その数秒後、全員の叫びがビルの屋上から響く。 そのビルの下、忠勝は槍を振るう。 横振りの一撃で数体、もう一回横振りで数体。下からの切り上げでまた数体。それから切り下げ。 そして足の裏をキャタピラを使い自身を回転させて突撃。腰から「ガキンッ!!」という機械音とともに周りにいるガジェットドローンが吹き飛ぶ。 槍の先端を回転させて一突き。そのまま刺さったガジェットドローンを鷲掴みし、放り投げる。遠くで起こる爆発。 (訓練用だからかもしれないが・・・攻撃動作が鈍いな。) それが忠勝の第一感想。今まで忠勝が駆けてきた戦場はこのぐらい兵がいて当たり前だったし下手をすれば数千の兵と相手をしていた。 だから一対多に長けており、怯まずに攻撃を繰り出せている。 そのうち一体を潰すと一瞬目が黄色く光る。これで100体目だ。 (いける・・・これで自分はお荷物じゃないと証明できる!!) 攻撃を繰り出す忠勝はやけに楽しげだった。が、見学している者達としてはそれどころじゃなかった。 「ありえない・・・」 皆一斉にそう呟いた。 なのはやフェイト、ヴィータやシグナムは下手すると100体近くの敵と戦うときはあるが大体は魔力で一掃。それでも疲労感はある。 スバル達に関しては数十体ぐらいが限界だ。 そして忠勝はその数を軽く超えた500体を相手にしている。ちなみに今は350体いる。 信じられないというのが皆の気持ちだが目の前でああいう戦闘をされては信じるしかない。 何故か、ため息が出てしまう。 その頃の忠勝はいろんな意味でだるくなってきていた。 (さすがに皆を待たせては悪いな・・・。) 槍を地面に刺し、低く構えて精神統一。敵のど真ん中でそんなことをしていれば当然無防備になり一斉攻撃を食らう。 忠勝に向かう魔法の砲撃。それが当たる前に忠勝は空中で大の字になり、周りには黄色いオーラが流れた。 戦極ドライブ、発動。 戦極ドライブとは、忠勝がいた戦国時代の有名武将が全員持っていた技だ。 敵を100人倒すことで溢れ出す自分の中の「気」を興奮状態にさせたままそれを体内で必死に抑える。 そして抑えていた気を一気に開放する。それが戦極ドライブという技だ。 これを発動すると何のデメリットもなしに移動、攻撃、防御などのすべての身体能力などが上がる。 忠勝は背中の紋章から二門の大砲を生成、また低く構える。砲口からはわずかに稲妻が出ている。 忠勝、攻撃形態。 一気に砲口からプラズマエネルギーが放出。 蒼白い光が残りのガジェットドローンの身を包み、溶かしていく。 プラズマエネルギーが消えた後に黄色のオーラが蒼に変わり、そして消えた。 間接か煙を噴出し地に降り立つは戦国最強本多忠勝。 彼の目の前には削れた地面と崩れたビルと青空以外、何もなかった。 「・・・ガジェットドローンの反応・・・ありません・・・」 シャリオの言葉が響くが皆は硬直して動かない。 忠勝は背中のロケットでビルの屋上へと行き、軽くお辞儀をする。それでも動かない皆を見て不安に見てまたオロオロしだす忠勝。 「すごぉぉぉぉぉぉぉいっ!!」 沈黙を破ったのはスバルの一声。それから皆からの感想を叫ばれさらに忠勝はオロオロする。 ついには叩かれもみくちゃにされ踏んだり蹴ったり。 埒が明かないので忠勝はロケットを展開して、逃げた。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1668.html
リリカル・グレイヴ外伝 鮮血のバレンタインデイ ここは地下深くに居を構える研究施設、ジェイル・スカリエッティの根城にして戦闘機人ナンバーズと死人兵士ビヨンド・ザ・グレイヴの住まいでもある。 そして今日は2月14日、乙女が鬼へと変わる日でもあった。 △ 「これだけっすか……」 ウェンディはそう言いながら机の上に鎮座した赤い包みを見つめる。 そしてウェンディだけでなくこの施設に住まう全てのナンバーズがここに集まり、その赤い包みを見つめていた。 その包みの中にあるのは説明するまでもなくチョコレートである。 「さて……問題はこれを誰が頂くか…」 セインが続けて口を開き、現在争点になっている話題をストレートに切り出す。 そう、この施設には現在チョコと名の付く物は机の上にあるこれ一つきりなのだ。 全員分のチョコレートを通販で買ったのだが発送の段階でトラブルが起こり、買い置きしてあったチョコはこれ一つ、そして施設のナンバーズは11人。 言うまでも無く数が合わない。 行き詰ったナンバーズは問題のチョコ一つを囲んで思い悩むに至っていた。 そして次に口を開いたのはナンバーズ長女ウーノであった。 「そう言えばこれを買ったのは私だったわね」 「なっ! そんな事言ってこの貴重なカカオの至宝を独り占めする気っすか!?」 「そうだよ! それにどうせウーノ姉はドクターにあげるんでしょ!?」 「なっ! べ、別にドクターに上げたって良いじゃない」 「あの変態中年に上げるくらいなら、日ごろお世話になってるグレイヴに上げるべきっすよ!」 チョコの権利を主張するウーノにウェンディとセインが猛反論。 もはやこの論争は開始より数時間を経ているが延々と平行線を辿り、一向に解決の糸口を見出せない。 そこでナンバーズ1番の単細胞ことノーヴェは事態を混沌へと導く爆弾発言を放つ。 「めんどくせえ! こうなったら勝負して決めようぜ!!」 その言葉に一同沈黙、ノーヴェの言葉を取るのならばつまりはナンバーズの姉妹がたった一つのチョコを巡って戦いをするという事である。 だが沈黙は一瞬で破られた。 「がはあっ!」 オットーが断末魔を漏らす、彼女の胸からは赤い刃が突き出していた。 それはディードの放ったツインブレイズの凶刃、あろう事かディードは自分の近くにいたオットーを問答無用で突き刺したのだ(ちなみに非殺傷設定なので死にません、念のため)。 「な…ディード……なんで…」 「ごめんなさいオットー、でも私はグレイヴにチョコを渡したいんです」 ディードの凶刃を合図にナンバーズ同士での血で血を洗う凄惨な戦いが始まった。 △ 「エリアルキャノン!!」 ウェンディの声と共に彼女の武装ライディングボードから砲撃が放たれる。 ウェンディの眼前に佇んでいたチンクはこの攻撃を最低限の体捌きで回避して距離を測る。 「甘いぞウェンディ!」 そして砲撃の合間を縫って投げられたチンクのダガーナイフが、ウェンディの身体に突き刺さる(もちろん非殺傷だ)のにそれ程時間は掛からなかった。 「うあああっ!!」 ウェンディはその身体に深々とナイフの刃を埋めて倒れ伏す。 この戦いで倒れたナンバーズは彼女でもう3人目、オットーに続けて戦闘能力の無いウーノが倒れたのだ。 戦いは始まってまだ10分も経っていないが、もう既に混沌の域に達していた。 「すまんなウェンディ、姉もこの戦いは引く訳にはいかんのだ……お前の分も想いを込めてグレイヴにチョコを渡す、だから安らかに眠ってくれ」 倒れたウェンディにすまなそうな顔をするチンクだがその時彼女に波打った壁から影が飛び掛る。 「隙あり!!」 それは固有技能ディープダイバーにより機を伺っていたセインである。 ウェンディを倒した隙を逃さずセインの魔手がチンクへと迫る。 だがチンクはこれでもナンバーズ中でもトーレに次ぐ最高の実戦経験を持つ戦闘機人である、この程度の不意打ちなど意味を成さなかった。 「きゃあ!!」 セインが壁から身を投げ出した瞬間、彼女の背後で小規模の爆発が起こる。 その爆発力に吹き飛ばされたセインにさらにトドメのダガーナイフが踊りかかった。 「甘いなセイン、最初からお前の奇襲を読んでナイフをセットしておいたのだ」 これでチンクの倒したナンバーズは二人、まだその他のナンバーズが残っているならば残りは6人。 △ チンクがウェンディとセインを撃破していた頃、別の一角では高速で宙を交錯する二つの影があった。 それはナンバーズの中でも飛行戦闘を得意とするトーレとセッテであった。 「ISスローターアームズ!!」 セッテの掛け声と同時に二つのブーメランブレードが高速で軌跡を描きながらトーレに迫る、だがトーレはこれを苦も無く回避してセッテの懐に潜り込んだ。 「遅い!!」 トーレの手に装着されたライドインパルスのエネルギー翼の刃がセッテに迫り、彼女の戦闘能力を殺がんと高速で襲い来る。 セッテも伊達にトーレから訓練を受けている訳でなく、トーレの攻撃をなんとか腕で受けて致命打を逃れた。 「くうっ!!」 なんとかトーレの攻撃を受けきったセッテだが、もはや腕は使い物にならない状態だ。 それでも彼女の瞳には降伏の二文字は無く、闘志に満ちている。 「もう止めろセッテ、これ以上は無駄だ」 「……嫌です」 「どうしてもか?」 「はい……彼にチョコを渡すのを、他の姉妹には譲らない!」 「そうか、ならば全力で応えよう!!」 トーレは全速で一直線に攻撃を仕掛ける、対するセッテは上手く動かぬ腕で持ったブーメランブレードを振りかぶって最後の抵抗を行った。 だがセッテの攻撃は虚しく空を切り、トーレの刃が下腹部に深く突き刺さっていた(非殺傷ですのであしからず)。 「セッテ……安らかに眠れ」 自身の倒した妹に涙ながらに呟くトーレ、だがそんな彼女に無慈悲な狙撃が火を吹き心臓を貫通した(言っとくが非殺傷だよ?)。 「がはあっ! ま、まさか……ディエチか…」 その遥か後方では狙撃砲を構えたディエチとそんな彼女の傍らに佇むクアットロの姿があった。 「ふふふっふのふ~♪ お馬鹿なトーレ姉さま、そんな風に派手に殺りあってたらバレバレですよ~?」 「う~ん……やっぱり漁夫の利なんて気が乗らないよクアットロ」 「あら~、ディエチちゃ~ん、そんな事言ってたらこのバトルロワイアルで勝ち残れないわよ~?(もちろん最後はディエチちゃんにも死んでもらけど)」 「そうかな…(なんか最後に裏切られそうだけど)」 ナンバーズ、残り5人。 △ 「うおおおおお!!!」 「くううっ!!!」 ノーヴェの放った蹴りをディードがツインブレイズの刃で受け流す。 だがジェットエッジの加速を加えられたノーヴェの蹴りは受け流されてなお重く、ディードの体勢を大きく崩した。 その隙を逃さずノーヴェは連続で回し蹴りを放つ。 「貰ったあああ!!!」 だがノーヴェの攻撃がディードを捉える前に空を切って鋭いナイフの刃が踊り掛かり、爆炎を巻き起こしてノーヴェを吹き飛ばした。 「きゃあああっ!」 「くううっ!!」 その攻撃に転がるノーヴェとディード、そして二人に近づく銀髪隻眼の少女の影。 それは説明するまでもなく、生き残ったナンバーズの一人チンクであった。 「ノーヴェ、ディード、二人とも生き残っていたようだな」 「チ、チンク姉…」 「チンク姉さま…」 ダガーナイフを両手に構えるチンクの瞳はいつもの優しい眼差しではない、それは無慈悲で残酷な戦士の目だった。 相手が可愛い妹であっても今の彼女に手加減する気など毛頭無いのだ。 チンクはナイフの狙いを二人に付けながら横目で周囲を確認すると物陰に向かって叫んだ。 「隠れていないで出てきたらどうだ、クアットロ!!」 その声にチンク達から離れた空間が揺らめき固有技能シルバーカーテンで隠されていたクアットロとディエチの姿が露になる。 「あら~? やっぱりチンクちゃんはできるわね~、なんでばれちゃったのかしら?」 「気配、そしてディエチの砲が持つ熱だな。さあ役者は揃った、最後の戦いを始めようじゃないか」 次の瞬間、目標をクアットロとディエチに変更したディードがツインブレイズを翻して襲い掛かる。 ディエチは即座に応戦しようと砲を構えるがそれは間に合わずディードの振るう赤い凶刃に倒れた。 「クアットロ姉さま、お覚悟!!」 ディードがクアットロに向き直った瞬間、ディードの胸を鋭い爪が貫いた(だから非殺傷だってば)。 それはスカリエッティの使う鉤爪型デバイス、まさか作戦指揮を行うのが基本であるクアットロが近接戦を行うなど考えてもいなかったディードはその凶刃をあっけなく喰らったのだ。 「お馬鹿なディードちゃんねぇ~、最後まで油断しなければ死なずに済んだのに(死んでないけど)」 こうして遂に凄惨な戦いはチンク・ノーヴェ・クアットロを残すのみとなった。 ノーヴェはエアライナーを展開し自分の駆ける道を作る、チンクは手に持ったガーナイフに固有技能ランブルデトネイターを発動し爆発的な破壊力を持たせる、そしてクアットロはシルバーカーテンによって作り出した幻で自身の身体を無数に増やした。 一触即発、少しでも均衡が崩れればそれが命取りになる。3人が3人とも汗を額に浮かべて緊張にツバを飲む。 そんなところに予期せぬ闖入者がやってきた。 「あ~、みんなここにいたのかね。ところでさっき机の上にあったチョコを食べてしまったんだが、あれは誰かのオヤツかい?」 まったくもって緊張感の無いスカリエッティの言葉に3人は盛大にずっこけた。 こうして虚しい姉妹同士の戦いは一人の勝者も産まずに終わりを告げた。 言うまでもないがスカリエッティはナンバーズの皆にフルボッコにされた(ウーノ除く)。 △ グレイヴが血液交換から起きてみれば、施設はメチャクチャに壊れ、ナンバーズは皆沈痛な面持ちでうなだれていた。 「…?」 不思議そうな顔をするグレイヴにナンバーズは皆、どこかすまなそうな表情をする。 そして涙ぐんだ声でウェンディが謝りだす。 「すまないっすグレイヴ、あたしらがバカだったす……せっかくのバレンタインなのに上げるものが何も無いなんて…」 ウェンディが泣きそうな顔でグレイヴに謝ってくるが、バレンタインという風習をよく知らないグレイヴは首をかしげる。 ナデナデ、とりあえず泣きそうなウェンディの頭を撫でる、それはもう子犬にでもするように優しく。 「う~、もっとして欲しいっす~」 「ウェンディだけずるい! あたしも~」 「ちょっと待て! そこは勝者(3人いたけど)の姉だろう!!」 「勝ち組で1番の年長者の私ですよね~、グレイヴさん♪」 「お前ら退け! ここはあたしとチンク姉が先だ!!」 「「………(セッテ・オットー・ディエチ・ディードの無口組み既に先に並んでる)」」 「なあ! 先を越された! この私がスローリーだと! ライドインパルスも堕ちたか…」 結局是全員の頭を撫でることになり、今日も騒がしく慌しい日々が過ぎる。 ちなみにこの後、ドゥーエの送ってきたチョコの詰め合わせを巡って第二次バレンタイン戦争が勃発する事になるとは誰も予想できなかった。 終幕。 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1777.html
第2話 魔法のある世界 剣崎達はティアナ達に連れられて、この世界のことを知る人物がいるという場所に向かっていく途中である。 「すみません。剣崎さん、飲み物持ってもらっちゃって。」 「いいっていいって。」 「ところで、この場所知っている人ってどんな人?」 橘がそう聞くとスバルが答えた。 「え~と、元々はこの世界に住んでたって聞いてます。今は任務があるからって私たちも来たんです。」 スバル達が会話しながら歩いていると、その人物がいるところに着いた。 「ここなのか?」 「はい」 剣崎達が着いた瞬間この世界の住人なのはとフェイトとはやてが剣崎達のところに来て 「あなた達がティアナが話してた人たち?」とフェイトが問いかけた。 「はい。そうですけど・・・。」「じゃあ、名前教えてくれるかな?」 「俺は剣崎一真だ。」「橘だ。」「・・・相川始だ。」「俺は上城睦月です。」 と剣崎達は自己紹介を終え、はやて達も紹介を終えこの世界のことを説明を始めた 「では説明します。ここはあなた達がいた世界とは違います。」とはやてが言う 「え?そんな・・・」「バカな・・」剣崎達はショックを隠せない。 「でも、ここは日本ですよね?」「はい。ここは日本の海鳴市。ティアナから報告があったんやけど、 あなた達が戦ってたのは一体なんです?もしかしたら私たちも協力しますんで。」 剣崎達は先ほど戦ったアンデット達のことそして、バトルファイトのことをはやて達に話した。 「もしかしたら、スカリエッティが関係してるかも・・・」 「スカルエッティ?誰だそいつ?」フェイトはスカルエティや今まで起きたことを剣崎達に話、そして 「よし、じゃあ俺たちの世界が危ないけどこっちも危ないから、俺は協力するよ。」と剣崎が言った。 「け、剣崎?」「剣崎さん?本気なんですか?」橘と睦月は協力には否定して、始は「俺は剣崎に 賛成してる。今の状況を考えてみろ。」それは始が珍しく橘と睦月に言って 「もしかしたら、 あなた達が追っている天王路って人もスカリエッティに協力している可能性があると思うんだけど」 フェイトがそういって「たしかに・・・今はここで争っている場合じゃない。」 橘がはやてに向かってこういった 「俺たちしばらくの間協力する。それでいいか?」橘が言って「本当ですか~?ありがとうございます。」 「だけど、そのまえに、任務があるんだけど協力してくれるかな?」となのはがいい。 「あなた達の力もみたいしね」フェイトもこういい。 「じゃあ、剣崎さんと始さんはスバルとティアナのところで、橘さんと睦月さんはエリオとキャロのところでいいですか?」 「「「「ああ」」」」 始と睦月は何かに気づいた 「なあ、いつから俺は相川さんから始さんになったんだ?」「俺もそう思った。」 「え?ああ、それはやね、え~と・・・」とはやては顔真っ赤になっていた。 「始さんてお兄さんって感じがするんよ~。うち兄弟いなかったから」 「そうか・・・悪いことをした」始は謝った瞬間 「はやてちゃん。クラールヴィントが対象をキャッチ」 「みんな。頼むよ」 「「「「はい」」」」と新人フォワード達がいい 「俺たちもやるぞ。」 「「ああ」」「はい」 剣崎達も戦闘の準備を始めた。 そして、任務が開始された。 「マッハキャリバー」 「クロスミラージュ」 「ストラーダ」 「ケリュケイオン」 「「「「SET UP」」」」 彼女たちが自分たちの相棒をの名前を呼んで。先ほどの服が代わった。 そして剣崎達は自分たちのバックルを出し 「「「「変身」」」」 剣崎、橘、睦月の前にカテゴリーAが描かれた光が現れ剣崎はブレイドに、 橘はギャレン、睦月はレンゲルに変身し、始はマンティスアンデットの力を借りカリスに変身した。 「これが、剣崎さんたちの力なんや・・・」そうはやてがいい。 ブレイドとギャレンはラウズアブゾ-バーにQとJを入れ。 「「アブソーブクイーン」」「「フュージョンジャック」」 ブレイドとギャレンはジャックフォームとなった。 そして、その相手が剣崎達にとっての初出撃となった。 「よし。今だ。」 「サンダー、スラッシュ」 「ドロップ、ファイアー」 「トルネード、ドリル」 「スクリュー、ブリザード」 「ライトニングスラッシュ」 「バーニングスマッシュ」 「スピニングアタック」 「ブリザードゲイル」 「ディバインバスタァァァァー」 「クロスファイアー・・・・シューーート」 「一閃必中・・・・はあああああああ」 「フリード、ブラストフレア、ファイア」 「対象からレリックを確認リィンお願いできる?」 「はいですぅ。」 剣崎達のお陰で任務が終わり剣崎達はなのは達が今住んでいる、ミッドチルダに移動した。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2699.html
Lyrical in the Shadow クロス元:SHADOWRUN 4th Edition 最終更新:09/03/30 第1話「ウィザーズ・ストライク!」前編 第1話「ウィザーズ・ストライク!」中編 第1話「ウィザーズ・ストライク!」後編 第2話「アウェイクンズ・マッドパーティー!」その1 第2話「アウェイクンズ・マッドパーティー!」その2 第2話「アウェイクンズ・マッドパーティー!」その3 短編 炎、氷、そして、光 クロス元 世界樹の迷宮Ⅰ アイドル管理局リリカルなのはStrikerS クロス元 アイドル防衛隊ハミングバード 魔法少女リリカルなのはCST クロス元 Cute Sister TRPG なのはのバーニングクリスマス 前編 クロス元 Burnin X mas(TRPG) なのはのバーニングクリスマス 後編 クロス元 Burnin X mas(TRPG) コメントはこちらに このページの先頭へ TOPページへ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1414.html
―――かつて、戦争があった。 一つのコロニーの独立運動に端を発した紛争が、世界全土を巻き込む全面戦争となったのだ。 世界は地上の『地球連邦軍』、そして宇宙(そら)の『宇宙革命軍』とに二分された。 両軍は魔導師と魔導支援機器・『デバイス』を戦争の主力にし、それに伴い魔法科学を急速に進歩させていった。 戦火が日を追うごとに拡大していく中、この戦争に介入してきた一つの勢力があった。 次元世界管理組織・『時空管理局』である。 介入の主な理由は、管理世界内で行われた戦争の仲裁、並びに使用が禁止されている質量兵器の存在が確認された為であった。 時空管理局は両軍の内部に停戦と質量兵器使用の中止を要求。 だが、戦争に勝つことのみを考えている両軍がそんな要求を飲むはずもなく、管理局の意思とは裏腹に戦争は激化していった。 局員達の間で全く好転しない世界情勢が延々と続くのではと囁かれ始めた頃、一つの事件が起こった。 連邦軍の軍事施設を訪れていた時空管理局局員が、革命軍の仕掛けたテロにより死亡したのである。 この事件を切欠に管理局最高評議会メンバーはついに武力行使での停戦強制を決定。 連邦軍、革命軍に時空管理局を交えた三つ巴の争いが始まった。 もちろん、時空管理局の提唱する『停戦の実現』はその兆しを見せることはなく、ただ悪戯に、魔導師達の死体が増えてゆくだけであった。 時空管理局の武力介入が始まって八ヶ月。 戦争は膠着状態に陥り、世界全体に張り詰めた空気が満ちていた。 そんな中、最初に動いたのは革命軍だった。 革命軍は次元世界そのものに甚大な被害を及ぼす『コロニー落とし作戦』、並びに悪魔のロストロギア・『闇の書』を切り札に、地球連邦政府と時空管理局に対して降伏を迫った。 これに対して時空管理局は闇の書の封印を最優先事項と捉え、XV級船艦三隻を投入。 戦時中ということもあり、早々に闇の書をアルカンシェルで葬り去ろうとしていた。 一方、連邦軍は極秘に開発していた決戦兵器・高性能デバイス『ガンダム』を導入。徹底抗戦の構えをとった。 導入されたガンダムの、その中でも『ガンダムX』の戦果は目覚ましかった。 革命軍のコロニーを搭載したサテライトキャノンで次々と撃ち落とし、単機でおよそ35%を破壊したのだ。 ……だが、このサテライトキャノンの一撃一撃が、新暦史上最大の悲劇の銃爪となった。 勝利を焦った革命軍は守護騎士吸収により闇の書を強制起動。 闇の書は過去の例に漏れず暴走を開始し、管理局のXV級船艦を全て制圧した。 更には革命軍のコロニーの管制までをも乗っ取り、戦争の二大勢力をいとも簡単に鎮圧したのだった。 この事態に恐怖した連邦軍は、ガンダムXのサテライトキャノンで闇の書の管制人格を破壊。 一瞬勝利を確信した連邦軍だったが、司令塔を失ったコロニーはそのまま暴走を続け…… ついには、第15管理世界の人類の故郷である地球に、致命的なダメージを与えてしまった。 更にコロニー落としの衝撃による大規模次元震までもが発生。 100億を誇った人口のほとんどは失われ、次元世界自体の存続さえ危うい状態となった。 もはや、戦争に勝ちも負けも無かった。 戦後、戦争の舞台となった第15管理世界は時空管理局の完全な指揮下に置かれ、戦後世界――『アフターウォー』と称されるようになった。 この名は新暦最大の悲劇の象徴として、次元世界中に広まっていった。 そして、15年の時が流れた――― 魔導新世紀リリカルなのはXtrikerS―エクストライカーズ― 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1779.html
仮面ライダーリリカル電王sts外伝第二話 「貪欲なる捕食者」 ここは次元犯罪者ジェイル・スカリエッティのアジトの一廓。クアットロは目の前にある四人分の食事を一人で食べていた。ガツガツ、クチャ、クチャ、ガブ、ゴクン!という音を立てながら。 「チッ、足りねえなぁ」 瞬く間に皿の数は減っていく。全てを喰らい尽くすその様子はさながら、野獣の様であった。 『牙王様ぁ、どうですぅ?』 「足りねえなぁ、こんなんじゃあ」 『そうですかぁ』 一見、独り言のようだが確かに二人は話していた。時さえも喰らおうした男と一人の男の夢のカケラは。 順調に食べ続け、四人分の量を食べ終わった直後、クアットロは突如動きを止めた。 「チッ、時間切れか」 そう言うとクアットロの周りの野獣の様な雰囲気は突如消えた。 「今の牙王様が表に出られる時間はせいぜい五分、まだまだ全開というわけじゃありませんねぇ」 『フンッ、その程度なんてことねぇ。それより、ガオウライナーはどうした』 「完成度は82%ってところですわぁ」 『チッ、早く完成させろ』 「分かりましたぁ。ドクターにそう伝えておきますねぇ」 さて、こんな風に話をする二人の出会いについて、語ることとしよう。 二人の出会いはほんの数年前のことである。 その日クアットロは、自室にいた。何をするわけでもなく只、そこに居た。自分の見たものを、その気持ちを再確認をするために。 その日の朝、クアットロが自室から出て、ラボの中を歩いていると足元に四角い金色の物体を見つけた。 (何なのかしら) そうクアットロは思った。あの光を見るまでは。 それは、突然現れた。禍々しい黒き光。その光は呟くように言葉を発していた。 足りねえ、足りねえ。 と。 その言葉はまるで呪祖の様に、繰り返し、繰り返し続けられていたのだから。 「喰らい足りねえ!」 クアットロはその様子をまるで引き込まれるように魅せられていた。 己を生み出した男。ジェイル・スカリエッティの様な狂わんばかりの喰らうことへの執着心。それでいて、ドクターとは違う野獣の様な猛々しきオーラ。 そしてその場を支配する圧倒的な存在感。 クアットロは動けなかった。いや、むしろ動こうとしなかった。ずっと見ていたかった。 「女、俺のマスターパスを返しやがれ」 「こ、これですの?どうぞ」 いつもの彼女なら皮肉を一つは言っただろう。しかし、彼女はこの光の前では何故か素直だった。 「それでいいんだ」 そう言うと光は消えた。クアットロはその部屋に戻り今に至る。 部屋に戻ったクアットロが考えるのはあの光のことばかり。そして、あの光のことを考えると胸が締め付けられる様に痛むのである。 (何なのよぉ、これはぁ) そう考えながら眠りについたクアットロ。 彼女が感じたこの気持ちは、誰もが一度は経験したもの。そう、世間で言う、〈初恋〉と言うものなのだから…。 目を覚ますと彼女の前にはあの黒き光が鎮座していた。 「お前が俺を呼んだってことか」 黒き光はそう言った。 「呼んだぁ、私がですかぁ」 「確かに呼んだんだ。だから、奪う。お前の身体を、な」 そう言うと光はクアットロの身体へと吸い込まれた。そして、目を一瞬閉じ、再び開いた目は、黒き光に包まれていた。 「これで、また喰らいつくす。全てを時も、だ!」 確かに身体を奪うことは出来た。しかし、それはほんの一瞬。次の瞬間、クアットロは苦しみ倒れた。 「どうしたんですのぉ?」 『チッ、俺の力が弱ってるのか…』 「でしたら私の身体の中で休むと良いですわぁ。これからは私があなたと共にいますからぁ」 『お前は俺に尽くすってわけか。』 「えぇ、そうですわぁ」 『俺は牙王。俺は全てを喰らい尽くす』 「私は、ナンバーズNo4、クアットロですわぁ」 こうして、二人の男女は出会った。 男の名は牙王。時さえも喰らおうとした男。 女の名はクアットロ。無限の欲望に生み出されし女。 この二人の出会いが後の世界の終末と呼ばれたJ S事件、最大最悪の悲劇『黒き空』を引き起こすことを一体誰が予想出来たであろうか…。 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/737.html
火照った身体に夜風が心地よい。 灼熱地獄からどうにかこうにか這い出してきた彼は、ふと空を見上げる。 月だ。 自分の知るものと寸分違わぬ、淡い燐光を闇夜に示す円。 安堵しかけて、 ―――ちょっと待てよ 気付いた。 間違いであって欲しいという願いを込めて再度天を見上げる。 ああ、そんなに要らないのに。 ――――――果たして月と言う物は二つもあったのだろうか? リリカル.exe 第二話 それはミッドチルダのどこか。深い深い闇の底。機械の起こす、獣の唸り声にも似た重く低い音が充満するそこに、蛍火のような灯りが一つ。写し出されるのは、二つの人影。 大柄な壮年の男と、幾分か禿げ上がった白髪の老人だ。壮年の男は目を伏せたまま微動だにしない。寝ているわけではなく、瞑目といったほうが正しい。 老人は空間に浮かぶコンソールを一心に叩いている。接続先は、一つのデバイス。槍にも似たポールウェポン――――――壮年の男の持ち物である。 何も知らぬ一般人が見たとしても速いと感じられるほどの速度で、老人はその槍の調整を行っているのだ。 無音。 静寂が淀み、澱み、どこまでも積み重なっていく。 「―――――――――――」 声を発するものは居ない。 次々と空間に走るデータの羅列へと視線を送りつつ、老人がただただタイプを続けるだけ。 時間の感覚が麻痺してしまいそうな光景。何分か、何十分か、それとも何時間か経った頃か。 ―――――――――――静寂を破るコール。 不愉快極まりない表情で眉を上げた老人は、しかし作業を中断する事も無くそれを無視。こんな時間に連絡を取ってくる者など分かりきっているからである。 と、瞑目していた壮年の男が目を開く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・出ないのか」 「フン、こんな夜中に連絡してくるヤツなど決まっておるじゃろう。あんな奴と話したところで一文の得にもならんわ。・・・・・・・・・それよりゼスト、調整が終わったぞ」 「そうか。・・・・・・いつもすまんな、ワイリー」 小気味いい電子音と共にデバイスとコンソールをつないでいたバイパスが外れる。ゼストと呼ばれた男はそのデバイスを手に取ると、試し振りを数回。大気を裂く鋭利な音が鳴った。 ワイリーと呼ばれた老人はわずかに眉尻を下げ、しかしそれも一瞬。尊大さと妄執を足して二で割ったような表情に戻ると、淡々と言う。 「阿呆、お前のデバイスを弄るようになって何年経ったと思っておる。そのデバイスの事ならお前や開発者よりもよく知っておるわい」 「・・・・・・・・それもそうか。月日が経つのは早いものだ・・・・・・・・・・・もっとも、俺の中の時間は既に止まってしまっているが」 「一々面倒な奴じゃな。何のためにワシがあの変態科学者とわざわざ手を組んだと思っておる。さっさとあのレリックとやらを回収して嬢の・・・・・・・・・」 ―――――――――――またもコールが響く。 大きな舌打ちを一つ、ワイリーはコンソールを叩く。無数に展開されていたスクリーンが掻き消え、後に残るのはたった一つの大きめなもの。 「ゼスト、お前はそのデバイスの試運転に行ってこい。あんなのと話しておったら余計にお前の命が縮まる気がするのでな」 「・・・・・・・・・・・・・・そうか、それでは行ってこよう。何かあったならすぐに連絡をくれ」 背を向けたままワイリーは答えない。さっさと行け、といわんばかりの態度だ。が、ゼストはそれに気を害する事も無く歩を進める。相変わらず感情が読めない表情のまま、その姿は外へと消えていった。 息を吐くと、ワイリーはうんざりしたような表情で点滅しているパネルを叩く。 ● 数刻後。 ―――――空調の効いた部屋。机があり、ソファがあり、まともな空気のある場所だ。 腰を下ろしたロックマン.exeの対面には同じようにソファに腰掛けた、制服姿の茶のショートカットの女性―――――八神はやてがいる。 机には広げられた資料――――紙、データファイルなど様々――――が散らばっており、ここに来てからそれなりの時間が経っている事が分かる。 「・・・・・・・・ええと、とりあえず今のロック君の状況なんやけどな」 いきなり人の名前を短縮しますか、などと突っ込む人は居ない。開幕の問答で「ロック君でええ?」と聞いてきたからロックマンは二つ返事でOKしただけである。 はやては続ける。 「次元漂流者・・・・・・・・・・・・簡単に言えば世界単位の迷子、ってことなんよ」 「迷子、ですか?」 「そ。たまーにあることなんやけどな、大規模な次元震とか巨大なエネルギーの暴走とかそんな感じのに巻き込まれたときに、何らかの作用が起こって次元世界を移動してしまった人の事を言うんや。 まあ、モノとかそーゆうのもあるんやけど、全部ひっくるめてそういうのを保護するのがウチ等――――――時空管理局の仕事やから安心してな」 一息。 「・・・・・・でな、なんで迷子って言われとるかはちょっとした事情があってな。次元世界ってのはそりゃもうぎょーさんあってな、転送だけならぱぱっと済むんやけど、その中から少ない情報で一つの世界を探すのは結構 難しいんよ。あ、難しい言うても調べきれへんってわけやなくてな、絞り込むのに必要な情報が漂流者本人からしか得られへんから時間がかかる、ってことなんやけど」 「・・・・・・・・つまりすぐには帰れないってことですか?」 「御免な、こればっかりはウチが発破かけてもどーにも出来へんのよ」 そう言ってふう、とため息をつくはやて。ロックマンの目には何故かそれが連日徹夜の後ようやく家に帰ってきた多忙な父親とダブって見えた。 ――――――まさかこの年でハードワーカーなのかな 時空管理局は実力主義。二十歳以下のまだ少年少女と言っても差し支えの無いような年齢のものであっても、有能であれば迷わず教官クラスに任命する事もあるという。 その点で言えばロックマンの世界のオフィシャル―――――とは言っても該当するのはあの伊集院炎山くらいなものだが―――――と似ているのかもしれない。通常警察とは一線を越した戦力を持ち、有事の際には被害を抑えるべく 惜しみなく戦力をつぎ込む。犯罪者達の取引の妨害、摘発。その他にも、要請を受ければ警護なども行う。 使うものが魔法かネットナビか、その違いがあるだけだ。 もっともオフィシャルは非常に門戸が狭く、魔導師で無い人間でも役職に就くことの出来る管理局と違って精鋭のみが集まっているという点があるのだがそこはあえて無視をしておく。 人海戦術というのは非常に有効なものであるし、何より一人一人の負担を減らす事が出来るのは良いことだからだ。。 閑話休題。 とりあえずロックマンは出された冷たい茶を飲み、落ち着いたところで口を開く。 「あの、一つ聞きたいんですけど、帰るまでの間僕はどうすればいいんでしょうか?」 「衣食住の心配はせーへんでええよ。遠足は帰るまでが遠足、うち等は保護したものを無事に帰すまでが仕事やからな。・・・・・・・・時々ここに残りたいとか言う人もおるんやけどね」 「へ?そういう人もいるんですか?」 「うん。なんか嫌ーな事があった人とか、魔法に魅せられた人とか、そんな感じの人ばっかりやね。ま、それは本人の意思やからうち等としては止める理由もあらへんしな。逆に戦力とか人手が増えてラッキー、とまで思う人もおるで」 「色んな人がいるんですね・・・・・・・・・・・・・・・・・と、そういうことじゃなくて。その間何か僕に出来る事って無いですか?」 「・・・・・・・・・・・どういう意味や?」 「いや、その、流石にここまでしてもらって何もしないっていうのは、なんかこう良心が痛むというか・・・・・・・・・・・と、とにかく一方的に好意を受け取るってのは何か間違ってる気がするんです!」 思わず声を張り上げる。なんというか上手く表現できなかったが、これはロックマンの本心だった。本気で『いい子』である。 しばらく考え込んでたはやてだったが、顔を上げるとまっすぐにロックマンを見て、優しい笑顔を浮かべる。 「・・・・・・・・・・・ほんまにええ子やなぁ。そこまで言うならロック君、管理局に入ってみる気はあらへん?」 「え、いいんですか?」 「別に魔法が使えなくても仕事は色々あるから、そこならロック君でも働けるはずや。最低限ミッドの言葉覚えてしまえば後はどうとでもなるしな」 と、はやては思い出したようにポンと手を打ち、 「そや、なら早よ身分証明書とか作らなあかんな。健康診断とかちゃっちゃっと済ませよか」 「そ、そうですね。それじゃ、案内してもらってもいいですか?」 「ん。任せとき!」 そういって立ち上がったはやてを追って、ロックマンも歩き出す。 ――――――この話し方する人って皆テンション高いのかな? 自分の世界に居たアキンドシティ出身者も基本的にテンションがアッパー入ってた事を思い出して苦笑いする。親近感を感じた理由はそれか、と思いながらも歩は緩めない。 元の世界に帰るまで、やれることをやろう。 ● 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 暗闇にて、一人思考に耽る老人が居る。アルバート・W・ワイリー。その年からは考えられぬほど覇気に満ちたその視線の先にあるのは、中空にて固定された一つのモニタ。 先程『変態科学者』から送られてきた、消滅寸前のフレイムマンの記憶データ。二、三の嫌味を言った後、ワイリーはその中から抜き出した動画に集中すべく会話を打ち切り回線を閉じた。 そこに映っているのは、最後の戦闘。 最初のほうはどうでもよさそうな表情で見ていたワイリー。しかし、後半に差し掛かった頃、その目が大きく見開かれる。突如乱入してきたその青い影。的確にフレイムマンの弱点をつき、背に燃える蝋燭を破壊する。 そのブレード状だった腕は一瞬で姿を変える。バスターと呼ばれるエネルギー弾を発射する兵器。連射しながらフレイムマンの視界を塞ぎ、そこでまた右腕を変形。朧のように揺らめく不定形の刀身が出現する。 連続して四回振り抜かれたそれから放たれるのは、四色の斬閃。 画像が乱れる。だが音声は生きている。聞こえて来るのは声ではなく音だったが、それでもワイリーの耳にはそれが誰のものであるか理解できた。 あの速さ。あの強さ。――――――自らの生涯のライバルであった科学者、光正の孫が操るナビだと、ワイリーは確信した。 くつくつと、喉が鳴る。堪えきれぬ歓喜を抑えることなく、ワイリーは哄笑を上げはじめた。 「・・・・・・・・・・・・・・く、はははは、はははははははは・・・・・・・・・そうか、ようやく、ようやく来おったか!あの時プロトに飲まれてこの世界へやってきてから何年たったかのう!? しかもこやつ、おそらくはこちらへ来たときにフルシンクロしておった影響かの、自分一人でバトルチップまで使っておる!成程、なんたる僥倖と言うべきか! 楽しくなってきたのう・・・・・・・・・・・・貴様もそう思うじゃろう、カーネル!」 暗闇へと声を投げかけるワイリー。その先にいるのは―――――――否、あるのは黒一色の外套に身を包んだ、堂々たる体躯を持つヒトガタ。カーネルと呼ばれたそれは機械仕掛けの重く低い声で答える。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は。ワイリー様が楽しいのならば、私もそうですから」 「そういう意味ではない、カーネル。お前はロックマンと戦ってみたいと思わんのか?」 「・・・・・・・・・いえ、思いません」 即答。清々しいほどの否定にしかしワイリーは気を悪くする事無く問いを重ねる。 「・・・・・・・・・ほう、何故じゃ?」 「私は将です。将とは負ける事を許されぬもの。故に、敗北などありえません」 カーネルが答える。抑揚の無い、しかし強い声だ。ふむ、と満足したような口調でワイリーは頷き、動画を終了。またも空間にコンソールを展開し、作業を始める。 モニタに映るのはデータの羅列。C、S、B、D、F、N、M、Q、と表示されたアルファベットには様々なタグが付いている。 ワイリーはFのタグに『Delete』と入力する。しばし思案し、 「・・・・・・・・・次は何を使うべきかの?」 答えるものなどいない闇の中に、その声は響いていった――――――― 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2116.html
リリカル・グレイヴ エイプリルフール編 「魔道戦屍 リリカル・ファンゴラム 魔法の呪文はケルベロスなの♪」 時空管理局地上本部のある一室、そこに二つの影が佇んでいる。 一人はレジアス・ゲイズ、管理局に長く務める中将。そしてもう一人は彼の秘書であるオーリス女史である。 二人は空中に展開したモニターで、とある管理外世界で入手した死人兵士の各種データを眺めていた。 「オーリス、ファンゴラムの調子はどうだ? すぐにでも実戦に投入できそうか?」 「はい、身体能力や使用火器センターヘッドの整備も万全です。ですが一つ問題が‥‥」 「なんだ?」 「確かにファンゴラムは単純な戦闘能力でならば最強の死人なのですが、何分あの気性ですから他の部隊や魔道師との連携が上手くいっていません‥‥」 「そうか、よし! ではこうしよう‥」 △ 「え~‥‥その‥では紹介します、今日から機動六課に配属された田中・ファンゴラムさんです」 「グウウウレエエイイイヴウウウゥゥッ!!!」 恐怖・緊張・困惑その他諸々の感情でヒクヒクと頬を震わせながらはやてが脇に立った死人を紹介する。 紹介された最強最悪の死人兵士は幽鬼の如く低い声で意味不明の呻きを漏らした。 ファンゴラムを紹介された機動六課の面々は一様にはやてと同じく顔をひくつかせている。 まあ無理も無いだろう。 なんせ黒い帽子とコートに身を固め、顔には口元を覆う拘束具を付け、背中に2メートルは優に超える超巨銃を携えた死人が突然やって来たら普通の人間なら腰を抜かしてもおかしくはない。 ファンゴラムは通常魔道師との連携を養う為に機動六課に一時出向という形で配属になったのだ。 言うまでも無くこれはレジアスの差し金であるが、上層部で決められた事情をなのは達が知る由はない。 「ねえ、はやてちゃん‥‥」 「なんやなのはちゃん?」 「“何”から突っ込めば良いの?」 「‥‥‥できればあんま突っ込まんで欲しいんやけど‥」 「無理だよ! それ絶対無理だよ!! そもそも“田中”って何!? どう考えてもやっつけ仕事で考えてるよ!!!」 「まあ‥‥なのはちゃん‥少し落ち着いて」 「落ち着けないよ! しかもあの人(?)なんでスバルやティアナの隣にいるの!?」 「ああ、それなんやけどな。ファンゴラムさんはスターズに配属‥」 「ちょっ! こ、困るよ!! 私あの人と上手くコミュニケーションとる自身ないよ」 「そんな事言ったら誰だって同じやと思うんやけど‥‥ともかくよろしく頼むっちゅう事で‥」 「ま、待ってよぉ~」 はやて、そう言うとそそくさと立ち去っていく。 後には機動六課前線メンバーと最強最悪の死人兵士がぽつんと立っていた。 なのははチラリと異形の死人に視線を移す。 ファンゴラムは“指示待ち”とでも言いたげな様子でジ~っとなのはを見つめていた。 ぶっちゃけなのはは泣きたかったが、9歳のころから鍛え続けた鋼の精神で恐怖心を捻じ伏せてファンゴラムに笑顔で話しかける。 「そ、それじゃあ‥‥訓練を始めましょうか‥えっと、ファンゴラムさん」 「ぐるううああぁぁっ‥‥了ぅぅぅ解ぃぃぃっ」 ファンゴラムの言葉は完全に人外のレベルに入るくらいの滑舌の悪さであったが、その様子からなんとか最低限の意思疎通を図ることが出来た。 こうして奇妙な新人、スターズ05が生まれた。 △ 「ぐるうううぅぅあああああぁぁっ!!!!」 野獣のような死人の叫びと共に、空気を震わせる超爆音が響き渡り地獄の番犬が壮絶な咆哮を上げる。 吐き出された巨銃の弾丸は大気を切り裂きながら正確に標的である訓練用ガジェットに命中する。 絶大なる破壊力を持つ無慈悲な弾頭は、容易く敵の装甲を貫き抉り爆ぜ飛ばす。 こうして機動六課の訓練場には死人の築き上げた無数の鉄屑の山が出来た。 その光景を確認した教導官は若干頬を引きつらせながらも、笑顔でこの日の訓練の終了を告げる。 「仮想敵ターゲットを全て撃破。よし、今日の訓練はこれで終了だね」 「「「「はいっ!」」」」 「ぐるあぁぁっ!」 フォワード5人(?)は元気良くなのはに挨拶して訓練を終える。 最初は不安だらけだったファンゴラムの機動六課への配属は思いのほか問題なく進んでいた。 訓練を終えたフォワード一同は食堂に行き食事の時間にする。 正直に言って、年頃の少女達に混ざってファンゴラムが食堂で食事をする姿はどこまでも悪夢的だった。 椅子のサイズは明らかに合ってないし、背中に背負ったセンターヘッドが邪魔極まりない、そして何よりも彼の食事風景は見るに耐えない惨事である。 ファンゴラムは食事を取る為に顔につけていた口を覆う拘束具を外す、すると頬から顎まで肉の抉られた顔が露になった。 筋肉やめくれた皮の内側の晒されたファンゴラムの顔はもはやホラー以外の何ものでもない。 あまりのグロテスクな光景に最初の内は吐く者さえいた程だ、今でこそ少しは慣れた光景とはいえど多くの者は青ざめた顔で頬をヒクヒクとさせていた。 「はははっ(乾いた苦笑い)、いつも大変ですねファンゴラムさん‥」 「そうでもぉぉないぃぃ」 ファンゴラムはスバルの言葉に相も変らぬ重低音の不気味な声で返す。 彼が同じテーブルにいるとかなり空気が重い気がするが、そこは鍛えた精神で耐え切る。 「そう言えばどうしてそんな風なケガしてるんですか?」 キャロのなんでもない質問にファンゴラムは突然カタカタ震えだす。 そして血涙でも流しそうな強い眼光で睨み、口を開いて腹の底から搾り出すような重低音の声で話だす。 「グウウウレエエイイヴウウゥゥッ!!!」 「グレイヴ?」 「仲間ぁぁぁ、殺しぃぃたあぁぁぁ、同ぁじいいぃぃ死人がぁぁぁ、このおぉぉ悪魔ぁぁめええええ!!!」 ファンゴラムの顔は目玉が飛び出そうな程見開かれ、口は筋肉とめくれた皮を大きくさらけ出して牙を剥く。 あまりの迫力に気を失うキャロとエリオ、スバルとティアナ涙目、食堂に集まったその他機動六課の一同も逃げ出す始末。 なのはとフェイトはこの惨事にいつもは決して出さない情けない声で泣いた。 「もうイヤ~! はやてちゃんレジアス中将に言ってなんとかしてもらってよぉ、このままじゃフォワードが壊れちゃうよぉ~(精神的に)」 「むしろ私はもう壊れかけだよぉ~」 しかしはやては既にリインや守護騎士達と一緒に逃げていた。 後にはただなのは達の悲鳴とファンゴラムの雄叫びが食堂に響き渡っていた。 終幕。 目次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1295.html
魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第十三話「第六天魔王VS究極戦国最強」 「ヴィヴィオ…ヴィヴィオ…!」 「こないで…!」 「!」 忠勝がチンクと戦っている間、こちらの戦いも決着がついていた。 スターライトブレイカーを撃ったことにより部屋の中には大きなクレーターができていた。真ん中に倒れているのは少女の姿へと戻ったヴィヴィオ。 「う…く…一人で…立てるよ…強くなるって……約束したから…。」 よろめきながら、それでも確かに立ち、なのはの元へと歩むヴィヴィオ。なのはの頭にはヴィヴィオとの思い出が廻る。 その光景になのはの目には涙が溜り、溢れる。なのははヴィヴィオに駆け寄り、もう離すまいと必死の想いで抱きしめた。 突然サイレンが鳴り出すと同時に駆けつけたはやて。ゆりかご内に響くアナウンス。 『聖王陛下、反応ロスト システムダウン。全ての魔力リンクをキャンセルします。』 「うっ!?」 部屋全体が桃色に染まり、なのはの足元に浮いていた羽をはじめ、魔力はすべて消された。 「どうするなのはちゃん!?徒歩で脱出するのは…!」 「くっ…どうしよう…。」 その瞬間、壁が爆発して中から白銀の巨人、本多忠勝が現れた。肩には結局ほおっておけず、連れてきた傷だらけのチンクが乗っている。 他の戦闘機人は他の管理局員が捕まえたらしい。手を伸ばしてこちらに来るように指示をする忠勝。 近づくと身をかがめ背中を指差す。乗れ、ということらしい。 「そうか!忠勝さんなら…いける!!」 そういえば忠勝は全身質量兵器。だとしたら魔力を使わないで一気に脱出できる。 なのはとはやては忠勝の肩に捕まる。全員乗せたと確認すると忠勝は機動形態を発動。 槍を前に突き出して鉄の鎧を纏っていたときとは比べ物にならない速度でゆりかごの中を駆け抜ける。 「!!」 肩に捕まっている全員に風圧がかかる。生身で受けているからそれはものすごいものであった。 しかしこの速度でやらなければ自分達もゆりかごの墜落に巻き込まれてしまう。壁が見えるが忠勝は速度を緩めない。 チンクがナイフを投げてランブルデトネイターを発動。爆発が起こる。 「伏せろ!!」 チンクがそう叫ぶと皆頭を伏せ、なるべく瓦礫に当たらないように身を掲げる。 ついに壁に激突。それでも忠勝は止まることはなく、ロケットを最大出力で点火。ランブルデトネイターの爆発でもろくなっていた壁を突き抜けていく。 刹那、視界に光が差した。目を開けると果てしない青空。雲ひとつない晴天。脱出は成功したのだ。ある程度離れてからゆっくりと地面に降りていく忠勝。 着地すると皆を降ろした。目の前にはスバル達フォワード陣や蒼い騎士甲冑に炎の翼という容姿になっているシグナム。瓦礫に腰掛けている元親と秀吉。 大怪我を途中で負いながらもなんとか意識を取り戻しているヴィータ。スバルとの戦いでベットに担架の上で寝ているギンガ。何より驚いたのは幸村や政宗の存在。 忠勝はどことなく安心したようで歩み出した。 直後に響く銃声。 気付くと自分の左肩の装甲が完全に壊れている。後ろを向くと辺りを己の邪気で染めながら歩み寄る魔王、織田信長。 「うつけが……貴様等の罪、万死に値する。」 皆が構えるが信長は両手を広げ、邪気を飛ばす。その邪気に纏われた瞬間次々と倒れていく。 これは確か、信長だからこそできる業。 死ニ至ル病。 この技を発動させている最中に信長の邪気を吸うと体にかなりの重力が襲い、胸がひどく締め付けられるような苦痛が襲う。 あたかも相手を病に罹っている状態にさせることから先ほどのような名がついた。 技を防ぐ方法は以外にも簡単。邪気を吸わなければいいのだ。だが皆吸ってしまっている。 つまり動けるのは機械だから呼吸を必要としない本多忠勝、ただ一人。 槍を振り下ろすが刀で軽くあしらわれ、顔面にショットガンの弾丸を受ける。左目の光が消える。見えなくなったという証拠だ。 ボコボコになった顔面の左半分。だがまだ右目がある。見えないわけじゃない。再び向くとショットガンをリロードもなしに五発連続で胴体に放つ。 胴体から流れ出るオイル。これは人間にとっての血液。 「戦国最強…片腹痛し。滅せよ。」 マントを翻し、忠勝に当てる。マントのはずなのに鋼鉄で殴られたような衝撃が襲う。 忠勝はまた立ち上がる。 (何百回…いや、何万回倒されても…負けない!!) 目は赤く光り、まだ自分に戦意はあるということを示している。 信長はその戦意をあざ笑うかの如く、マントを翻してそこから何本もの針を生み出して忠勝に容赦なく突き刺していく。 そして忠勝は槍を地面に刺す。いきなりの衝撃に浮く信長の体。紋章から飛び出す漢字の描かれた円陣。 少し浮き、大の字に。円陣に描かれた漢字が一文字ずつ光り出す。 本多忠勝、バサラ技発動。 天空から降り注ぐ何本もの蒼白い光の柱は信長を襲い、鎧を砕いていく。 数秒、その光景が続き、終わった。動きを止めた忠勝。 しかし信長はまだ、立ち上がる。目は黒みを帯びた赤に染まり邪気は増す。 「うつけがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 刀を逆手に持ってマントと刀の連続攻撃を繰出していく。攻撃がひどく重く、速い。信長もバサラ技を発動したようだ。 吹き飛んでもまだ接近してマントを何度も翻し、装甲を砕いていく。 最後に邪気をショットガンにこめて放つと忠勝の胸を貫通。忠勝は膝を突いて首をガクン、と下ろす。皆が自分の名前を呼ぶ。だが暗くなっていく視界。 まだ、相手を倒していない。もしここで倒れたら後ろにいる皆はどうなるのだ。倒れるべきではないのに、薄れていく意識。 「立ってぇぇぇ!!!」 頭と耳に響く幼い少女、ヴィヴィオの声。ふと見ると体には虹色のオーラが浮かんでいる。 「今戦えるのは…忠勝さん!貴方だけなんや!」 「戦って…そして…勝って!!」 「私達の魔力を貴方に…!!」 「貴方は、わたし達の居場所を!」 「大切な人たちを!!」 「命をかけて守ってくれた!!」 「だから今度は私達が貴方のために命をかける番です!!」 続いて流れてくるのは自分を想う皆の声と、力と。自分は機械のはずなのに、胸が熱くなる。ボロボロになったはずなのに、まだ立てる。 そうだ、自分はまだ立てる。戦える。皆がいるから。 ブーストを最大出力。信長はショットガンを撃ち、忠勝の装甲を撃ち抜き、傷つけているが止まらない。むしろ速度は速まっていく。 「ぐぬぉっ!?」 「!!!」 信長の首を掴んで上空へと舞い上がる。まだ飛んでいるゆりかごへと突っ込んでいく。 何個もの床や天井をぶち抜いていく忠勝。まだ残っていた動力炉だったクリスタルの残骸に信長を叩きつける。 忠勝はまだ使ってなかった赤色の宝石を取り出して具現化を始める。現れたのは予想通りなのはのレイジングハートに似た杖。 だとしたら使い方は同じなはず。先端に神経を集中。溜まったのはプラズマではなく自分の周りに浮かぶ虹色の魔力。それでもいい。忠勝は溜まった特大の魔力を放つ。 体を揺るがすほどの衝撃。反動で今までぶち抜いてきた床を通り過ぎて外に投げ出される。自分の放った魔力はゆりかごを見事貫通していた。 しかし、信長は生きている。鎧は打ち砕けて直撃したはずなのになんという生命力だ。 「ぶるぅおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」 向けた銃口からはおびただしい量の赤い邪気。邪気は自分の身を包み、地面に衝突。 ぽっかりと空いたクレーター。だか忠勝は立ち上がる。間接はガタガタ、でもまだ、戦える。槍を再び構えて、祈る。 (力だ…。この魔王を打ち破る程の力だ!!) 槍に自分の纏っていた虹色の魔力を全て流し込む。槍のドリルの部分が魔力で巨大化。まだだ、これだけじゃ足りない。 その時だった。桃色、金色、白色、それだけじゃない。さまざまな色の魔力や気が忠勝の槍に集まっていく。 (ありがとう…。) 槍はいつの間にか自分の身の丈を超えるほど巨大になっていた。信長が落下してくる方向に巨大な槍を向ける。魔力で巨大になった先端が回転。魔力が螺旋状に形を変えた。 ブーストを再び点火。それだけじゃない。背中に鳳凰の如く美しく、雄雄しき翼が舞う。 名付けて、戦国最強本多忠勝、究極形態。 放ってくる邪気を切り裂いて忠勝は飛ぶ。魔王を貫き、戦いを終わらせるために。 「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 皆の雄叫びが響く。その声を背に受け、目が赤く光り輝いた。 溢れんばかりの邪気で突撃が遮られる。だが、今の自分達の想いに貫けないものはない。 空かないはずの忠勝の口が開き、咆哮にもよく似た鋼を唸らせる音が響く。次第に邪気に穴が開く。 「ウゴアァァァァァァァァァァァァァ…!!」 「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ…!!」 響く究極戦国最強の咆哮、響く第六天魔王の絶叫。音を立てて邪気は割れる。眩い光が魔王を滅するべく身を包む。 皆の想いを乗せた巨大な槍は信長どころか、聖王のゆりかごまでをも巻き込み、爆発。 爆発は広がることはなく一点に集中。一本の光の柱となって天を突く。空に落下してくる魔王の姿は、ない。 静寂。勝利したのにその場の支配していたのは静寂だった。忠勝は心配そうに見つめる皆のほうへ向き、拳を天に掲げる。 直後、割れんばかりの歓声が響き渡る。体が思うように動かないが自分はちゃんと、生き残った。 戻る 目次へ 次へ